FURUKAWA

印刷用ページ

ニュースリリース2008

熱エネルギーを電気に変換する高性能熱電変換材料を開発

-スクッテルダイト系熱電変換材料として世界最高の性能を実現-

2008年8月20日

当社は、熱エネルギーを電気に変換することで期待されている熱電変換材料において、中温領域(室温~600℃)で高い性能を持つ熱電変換材料の開発 に成功しました。今回開発したのはFe(鉄)、Co(コバルト)、Sb(アンチモン)、希土類元素(※1)などからなるスクッテルダイト系(※2)熱電変 換材料です。

現在、日本で消費されるエネルギーの約2/3は未利用のまま、廃熱として大気中へ排出されています。この廃熱を電気に変換で きれば、省エネルギー、環境負荷の軽減に繋がります。熱電変換材料を組み込んだ熱電変換モジュールは機械的稼働部品がなく、廃熱発生の場所に応じたサイズで設置が可能であり、廃熱を利用した発電手法の一つとして注目を集めています。

熱電変換材料は電気的特性が良く(※3)材料の熱伝導率の低いことが高い性能を得るポイントになりますが、スクッテルダイト系材料は電気的特性が優れている反面、熱伝導率が高い傾向にあることが課題となっておりました。当社はこの電気的特性に影響を与えずに熱伝導率を減少させることに着目し研究開発を続けてきましたが、このたび大幅な熱伝導率の低減を実現し、熱電変換材料の性能を向上させることに成功しました。
通常、熱電変換材料の性能は無次元性能指数(ZT)によって表わされ、p型、n型材料共に実用化レベルはZT=1を指標としていますが、今回開発した熱電変換材料はp型でZT=1.1、n型でZT=1.3と実用化レベルに到達し、スクッテルダイト系では世界最高の値を実現しました。さらに、熱電変換材料はp型、n型材料の両方が良好な特性を持っていることが必要ですが、開発した材料は、p型、n型とも350℃~550℃の広い範囲でZTが1を超えており、実用上の観点からも応用範囲が広がることが期待されます。

また、この熱電変換材料を用いて50mm角×高さ8mmの熱電変換モジュールを試作し、上面(高温側)を720℃、下面(低温側)を50℃の条件で試験したところ、熱電変換効率7%、出力33ワット(出力密度1.3ワット/cm2)と高い熱電変換性能を得ました。
今後は、熱電変換効率をさらに改善し、量産化に必要な技術開発を進め、自動車、工場、焼却炉などにおける熱エネルギーの有効利用に向けて、2010年の実用化を目指して研究開発を進めてまいります。

なお、この成果の一部につきまして、8月21~22日に早稲田大学大久保キャンパスで行われます第5回日本熱電学会学術講演会において発表(22日)を予定しております。

※1 希土類元素
原子番号57番のランタン(La)から71番のルテチウム(Lu)までのランタノイドと、21番のス カンジウム(Sc)及び39番のイットリウム(Y)を加えた計17種類の元素のこと。このグループは重い元素からなっており、化学的性質が互いによく似ている。
※2 スクッテルダイト系
CoSb3に代表される化合物の結晶の構造。
※3 電気的特性が良い
材料に温度差を加えたとき大きな起電力が発生することと、材料そのものの導電率が高いこと。

《お問い合わせ先》
古河機械金属株式会社 素材総合研究所  TEL:029(839)2151

《開発経緯》
今まで多くの熱電変換材料が研究開発されてきましたが、その熱電変換性能を左右する無次元性能指数(ZT)において、p型、n型材料の両方が実用化レベルの指標となるZT=1を超えることが求められ、特に最も用途が期待できる中温領域(室温~600℃)での高性能な材料の開発が望まれています。
当社はp型、n型共に良好な特性を得られる可能性の高いスクッテルダイト系熱電変換材料に注目し開発を進めてきました。高い熱電変換性能を得るにはこの良好な電気的特性のほかに、材料の熱伝導率が低いことが必要です。スクッテルダイト系材料は電気的特性が優れている反面、熱伝導率が高い傾向があります。
当社はこのスクッテルダイト系材料の電気的特性に影響を与えずに熱伝導率を減少させるため、La(ランタン)、Ba(バリウム)、Yb(イッテルビウム)、Ca(カルシウム)などの元素を中心に、さらにこれ以外の元素を同時充填することによって大幅な熱伝導率の低減と熱電変換性能の向上を達成しました。
充填に用いる元素の検討を進めた結果、La、Ba、Yb、Caに加えⅢ族元素のAl(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)ならびにⅣ族元素のTi(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)等を用いて、同時に3種類以上の多種元素を充填することにより、熱伝導率の大幅低下を実現しました。これにより従来報告されている熱電変換性能の2倍以上の優れた性能を持つ材料を開発しました。これは多種元素の導入によって結晶の格子振動が非調和振動(※4)となり、熱の伝導が妨げられるためと考えています。

上記の結果、p型材料では、(La, Ba, Ga, Ti)0.9(Fe,Co)4Sb12における熱電変換性能は従来の材料と比較して、ZTは0.5が1.1に上昇しました。n型材料では、(Yb, Ca, Al, Ga,In)0.9(Co,Fe)4Sb12における熱電変換性能は、従来材料に比べ、ZTは0.7が1.3に上昇しております。また、これらの熱電変換材料は、p型、n型とも350℃~550℃の広い範囲でZT=1を超えており、実用上の観点からも応用範囲が広がることが期待されます。


従来の材料 開発した新材料
組成 無次元性能
指数(ZT)
多種元素充填での組成
(括弧内が充填元素)
無次元性能
指数(ZT)
p型材料 (La)-Fe-Co-Sb 0.5 (La,Ba,Ga,Ti)-Fe-Co-Sb 1.1
n型材料 (Yb)-Fe-Co-Sb 0.7 (Yb,Ca,Al,Ga,In)-Fe-Co-Sb 1.3

※4 非調和振動
結晶格子の振動が不規則な状態を表わしており、調和振動が乱された場合(非調和振動)では熱の伝導性が減少する。

《試作熱電モジュールの性能》
開発した熱電変換材料を用いて50mm角×高さ8mmの熱電変換モジュールを試作したところ、高温側 600~720℃、低温側50℃の条件で、熱電変換効率6.5~7%、また出力密度0.9~1.3ワット/cm2が得られ、出力は23~33ワットに達しました。

以上

古河機械金属グループ